翻刻
【右丁】
おなしされと此国の家作の事古書に伝ふるものなし
只古き絵まき物なとにて見てしるも七八百年このかた
のもの多く其前はしりかたしおのれ年わかきより
国学家に就て其事を問ふに人家の高低は上にいふ
かことしたま〳〵神祇の官社の制は伊勢両宮儀式
帳また造殿式等に記さるゝ所をみるに正殿の高さ一丈
一尺に過す其低きは終に八尺とみゆれは甚ひくし
伊勢神宮の式に階の長さ六尺とあるにて床の高
からぬ事はかりしるへし今伊勢の両宮のさま又大嘗会
悠紀主基殿なと古代のさまなるへけれとみな神代に
【左丁】
ちかき全く質素朴実なるのみにして神社は世の人の
すまへる家の証にはしかたし今世の賀茂をはしめ所々の
古き宮居また絵巻物にみゆる辻社今時仕入れに
造りおける稲荷の宮なとみな床下の高くあるなと
後に制の改りたるものとみゆ此外古き寺なと床下
に石をしき石灰のたゝきにしたるなとみな床下の
湿気をはらふ為なるへし我国の盛なる時つくられ
たる大内裏はおほけなき事なから善を尽し美
をつくしたるものなるへけれと今書物にのする所
図と宮殿楼閣の名のみにて其制造のくはしきは知