翻刻
【右丁】
よしなしされと今の内裏其遺風なるへし是又おのれ
らかしらさる所なから板敷にしてしき物を用ゐしるゝ所も有よし
上け畳といふも敷物にひとし○貴人の寝所のさまは
類聚雑要抄にあるをみるに床を別に建て四方に戸
帳をかけたりとみゆ大かた摂家親王方を始寝殿と
いふ所に別に建られたるものと覚ゆ武家のさま三百年
前のさまとも替りて各畳は敷込たれと下段中段上段
と上りて帳台は上段よりつゝきて高き所なり四五百
年のむかしのさま残りたるは京の北山の金閣東山の銀
閣なりこれ足利義満公金閣をいとなまれ同義政公
【左丁】
銀閣を造られて共に数寄者の遊楼也これらみな板しき
にて二階なり武家には紀州若山に水野殿の屋敷大和
大納言殿の殿舎を賜りて引移したる家作なりと云
今の武家の玄関書院とはいさゝか異なりみな板敷
にて上け畳なり外の作り方はこゝに用なけれは不言
或人言今の家作に床の間といふもの仕来により
て家毎に有通例かまち有て平畳より上りたり
古くは敷板といひて畳の上に板をしき三具足を
立たるを後には床飾といひて三幅対の掛物中は必
仏像左右も脇侍なるへきを風流に草木花鳥山水