翻刻
【右丁】
なとにし多く香花をかさり仏檀のことくするはいかなる故
かしらす後に床の間といふ名によりておもへは夜臥すへき
床の間にはあらすやと云此説みたりなりといへともさも有
へく覚ゆ又帳台と言むかしのさま今現存するは京の
東山高台寺に太閤秀吉公の政所高台院殿の御帳
台を其まゝ納められたりとて山上に建られたり先年
こゝに行見し事有さるは一間の内に境有てこゝに今
時俗家に中障子といふことく下より二尺はかり上り三尺
はかりの中窓のことく襖障子有て其頃の堂上方の書
れたる色紙かたおして有上下廻りは張つけなり中に
【左丁】
入れは後にまた出口あり中の広さは覚えすそのころは
何の心付もなく色紙かたなとをめてゝ帰れり今思へは
其中に床をおきて臥所成事いちしるし○鴨居の上に
らんまを明て障子を建るは常なり平人の家にこの
らんまを板にはり物のかたちをすかしなとしたるは
風流に過たるよりのすき成へし○又下さまの事はむ
かしもいかゝなりしや今の江戸の町々のこときは元来
人多く住込て止事を得さるものゝうら借家に至り
ては風の吹きぬかぬはさる事なから床も低く表の
かよひちせまく総雪隠の臭気はき溜の汚物鼻を