翻刻
【右丁】
貫き向隣に病人あれは熱のにほひもさけかたしよくすみ
なれて過すよとおもはる西洋人聞しらはいたく恐るへし
此等の事は今改るによしなし一構の屋敷をもちて
心のまゝに家作する人はおのつから東南をあけ北
よりも風入よくせんとするはかの夏をむねとせよと
いへることく炎暑に堪へかたけれはなりけりいま
よりのち家作らん人は此養生法にならひてよく
心を用うへし民間はむかしよりおのかまに〳〵家作
すれは必東南を明て作るは自然の理なり山家には
たま〳〵六七百年前の家作のまゝなるもあれとみな
【左丁】
争戦の時世にて其時も今もさかりにさかえたると言家は
少しされは古代の十分なる家作といふものとみにたつね
しりかたし貝原か養生訓にも床高く湿気なき
をよしとすと言り○厠は西洋の制造はいたく異なれは
今当て言かたしされと川屋といへる名を思へは川に
造りかけて不浄を流し捨るにや大内裏の裏の図中に
厠といふものなしいにしへは箱にて取捨たるものと
みゆひすましみかはや人【注】と言名は其事に預りたる人
にて川やといへるも有しにや古絵巻にも川やはみえね
と何れの家にも遣水引入たるさまみゆれは其ため
【樋洗御厠人(ひすましみかわやうど)=樋(大小便を受ける箱)を掃除などを受け持った身分の低い女。】