翻刻
【右丁】
気を囲ひ空気に奪れさるためなり
○木綿は其質よく温気を引又よく此温気を放つ事はや
し絹は温気をひく事遅くしてまたこれを去る事か
たしゆゑに肌にふるゝ襦袢の類は木綿を最上とすこれ
其あたゝか成といへとも久しく体中より駆りさる旧気を
保つ事なき故也すへて肌につくる衣類はしは〳〵洗ひ
て清らかなるをよしとす清からされは汗膩脂垢なと布
目に留りて体気の発散をとめ再ひ其不浄の気を
体中に吸ひ入て人身を病ましむ故に襯衣垢つけは
逆上頭痛等の病を生る事多し殊に夏は汗出る事
【左丁】
多き故朝夕屡々肌衣を替るをよしとすよこれあつく
ほとにすへからす
○上衣の類は養生に関る事少き故各寒暖の度に従ふ
て其欲るに任すへし胸領はよく閉て風の当らさるやう
心付へし冬日東北の風に向て領下胸上を冷せは咳嗽
肺病の恐れあり
○帯紐の類はなるへくたけゆるやかにして数少きをよし
とす総て衣帯究屈なるは血の循環を妨て不宜
○衾蓐もまた木綿をよしとす其中に入るには綿花を
良とすといへとも年月をへてよこれ垢つけは其害多し