翻刻
【右丁】
いひかたし茶色濃く味ひ志ふく且苦きは其中に含
む単寧【左ルビ:タンニン】といふものにして収斂強壮の能あれは功もまた
なきにあらす
○酒
酒類の味有はみな其中に含むアルコリネによる酒醸の
醇烈なるものはアルコホルをふくむ事多し故に酒と焼酒と
同物也少しくこれを呑めは精神を鼓舞し血行を旺
盛せしめ一時快心なりといへとも漸久しくして身心
倦怠精力沈抑すこれによつて酔客は始騒くして
後に睡眠を催す者多し故に他日其愉快を求めん
【左丁】
と欲るもの次第に其酒量を増されは前日の楽をうる事
不能終に血中に其毒を遺し精力沈衰筋場肉潤顛
狂不治の廃疾を作すに至る若其害しからさるものも消
化機を傷ふを以て酒客多く不食にして身体痩枯す
るもの多し時として酒客に脂多く肥大なるもの有是
只アルコホル中の炭水質化生して脂肪を生し皮肉
間に充満するのみ所謂脂肥病といふ一種の悪病にして
決て壮健にして筋肉肥堅なるにあらす故に酒は康
平の人に在て独大害有のみ少も用をなす事なししか
のみならす其毒を以て子孫に伝ふれは酒客の子多