翻刻
【右丁】
○口は実に百病の門にして飲食の過不及食物の善悪に
よりて諸病を導く総【惣】て良き滋養のものを択ひ已に
其腹に飽かは則止むへし一時に多種を交へ食ふ事
なかれ人々其体【體】の強弱と労働の多少にしたかひ
且空腹の時節に応し一日分其宜に適せしむへし
先朝食は其味単簡にして軽きものを良とし昼は
専ら滋味にして養ひ多きものをよしとし哺食は
また簡なるへし夏日暖地に住む人は多く野菜を
食ひ冬日寒地は肉食を多くすへしすへからく能其
時刻【剋】をさためおくへし夜間に遅く食すへからす食
【左丁】
後速かに寐につくへからす熱物は胃腸を傷り消化の機
をさまたく務て冷物を食すへし就中水は飲液中
最第一の天造物にして血の流利を調へ腸胃を清
淨にし能く消化の機を助く但甚しく過飲する事
なかるへし○人食時に臨みて其色味をえらひ或は酒
醸を貪り痛飲止す又放食多餐恒なく妄に甘味
を嗜み湯茶を喫し体【體】躯を養ふ霊物を以て却て
其身をそこなひ終に是か為に病を求め其身を亡
す賎むへく笑ふへきの甚しきにあらすや魚の餌に
よりて釣られ鳥獣も食を求めて陥阱におち入るみな