翻刻
【右丁】
停滞して害をなす事眼前也外の穀物もみなしかり
○菜蔬木の質有ものあしかるへきは勿論也香の物も説の
如しといへとも今これに代るものなししはらく多食を
禁すへし夏日の新漬もの亦心を用ゐて食へし
○味噌汁といふもの家毎に常食なりかの国になけれは
こゝに説なしといへとも押て考るに麦豆を用て麹を
加へ塩にこめて造り貯れは必胃中にして疾くこなれ
されは腹持よしと称誉すれと麹はもと米をむし花を
咲するとてにびのことき物を出し甘くする故腐れ易し今
これに代るものなけれはいかむともしかたし心をつけて
【左丁】
其害にならさる程をはかるへし又麹納豆甘酒なとみな同
物也としるへし○養生訓に味噌は性和にして腸胃を
補ふ《割書:云々》此説うけかたし其性質を委しくせすして常
食に馴たるを以てかくいへるなるへし
○餅菓子干菓子共に今時の如きはいにしへに在事を不
聞全く三百年来太平の贅物也追々高尚になり行
此頃製るものは其味も淡薄にしてさのみ胃中 ̄ニ もた
るゝにもあらねは上製なるは少しはゆるく【或は「し」ヵ】もすへしすへて
甘味のものを過食すれは胃腸の収縮力を弱くして必
大成害をなし蚘虫【注】其外諸難病を発る事有とか可恐事也
【注 かいちゅう=腹中に寄生する長い虫。回虫。】