翻刻
【右丁】
の習はしは気息に深く引てはらの中に入これを吐くに
鼻より出すされは西洋人にくらふれは其害尤多しといへ
とも年来のならはしにて幸に其毒にあたる事なし
煙草は一二吹してつれ〳〵をなくさめつかれを忘るゝなと
其煙の口に入て一種の佳味を覚え精神を鼓舞せ
しむるか故也吸ひ入るとすひ入さるにはよらすされと弱き
葉は吸ひ込されは功なきか如くなれは強き葉を口中
のみにて吹去る事とすへし今俄に禁すれは又これか
為に害あり年若き人はつとめて呑ならはさるうちに
禁すへし
【左丁】
○豊城《割書:言》煙草はもとより害多く益なき事皆人のしる
所にして既にむかし制禁せられしとかきけと今は大や
けにして制するものなしされと旅行する人道にいこふ
程煙草一ふくに遠足の労を忘れあるひは閑居の
つれ〳〵をなくさめ深窓に書見する人なと是をもて
欝を散し浩然の気を養ふ又きぬ〳〵のわかれに
臨みては此一ふくに其情を残すなと其なす所によ
りては害有とのみもいひかたかるへし今時の人さのみ
好まさるも煙管の一具不揃は事闕たることくおもふ
よりつひに呑習ひて側をはなたすされは若年より