翻刻
【右丁】
夜間睡眠を得るか又は睡眠あるか故に日中の労動を得る
かいまた甚明らかならさるか如しといへとも人若睡眠に
足らされは精神疲労をおほえ身肢だるくおほえす
あくびのびをする也若久しく眠らす神思を労する
事多けれは病気増して神力敏に過き些のことにも
驚き五官霊敏にして事物目にふれやすく耳鳴て
蝉の鳴か如く四肢震へて筋力弱り身体枯瘦し勇胆
おとろへ遠謀深慮を遂る事不能世にいふ癇症なるも
のこれなり○人の物事に不感喜怒哀懼の妄に起らさ
るは精神強くして事物に動せさる故也是を以て不
【左丁】
眠は人の為に害有事多し少くも昼夜平分の時にして三分
の一は安眠すへし夏日長晷の時は午後期限を定めて午
睡し夜中の不足を補ひ精神才力を増益すへし
○精神を休止するは必要なりといへとも多く寐て用ゐ
る事少けれは精力安逸に過て毎事倦易く才力
発動しかたく運血も遅滞し易く筋骨軟弱怠
懦にして機会に応する事能はす又是か為に諸種
の病痾を生す大凡書生学問を事とするものゝ如
きは爽明に早起して新鮮発動の精神を以て
書をよみ才智を煉り午時前後倦怠を生せは断