翻刻
銀出すといへとも年ことに出す所の數す
くなきを以て國用のゆたかならさる事も
またおもひはかるへし
一佐渡國には黃金ある由宇治大納言物語に見
えたりされは此國には昔よりありしかと世
に是を採るすへをしらさる也近き頃ほひ上
杉謙信入道彼國を攻取りしより後其金を採
りて國用を足す太閤秀吉かねてより此事を
傳へ聞て代をしられし後に謙信の義子中納
言景勝を欺て奧州に移し佐渡國をおしとり
て金を採らせられしかと金出すしてほとな
く薨せられたり慶長五年關个原の事終りし
明る年より此國の銀出る事おひたゝしとも
いふはかりなしかゝる事は我國のいにしへ
より傳聞さる所なり同十三年の頃より銀出
る事はしめのことくにはあらすこれより年
年にすくなくなりて或は又黃金もましえ出
たり
一石見國より黃金を出せる事其始をしらす是
も始は出る事多からす慶長六七年の間より
出る事多くなれり程なく此國の金を採るを
は止められき
一伊豆國より黃金白銀を出す此國より出し事
も聞えす是も慶長十一年の頃より出て其數