翻刻
代を經て次第に金銀すくなくなりしほとに宋
の世の中頃より交鈔といひて我國の紙錢のこ
とくなるものを用ひて國用を通する事になり
て元朝に至ては專ら此交鈔はかりを通し用ひ
明朝に及て銅錢を以て交鈔に雜え用ひて今に
至れり是漢の代より後には金銀銅共に世に出
る事多からぬ故なりされは彼國代代の人の論
せし所は金銀の天地の間に生するこれを人に
たとふれは骨のことし其餘の寶貨は皆皆血肉
皮毛のことく也血肉皮毛は傷れきすつけとも
又又生するものなり《割書:米穀布帛をはしめてもろ|もろの器物等皆然なり》
骨のこときは一たひ折れ損してぬけ出ぬれは
二たひ生するといふ事なし金銀は天地の骨也
《割書:五行のうち木火土水は|血肉皮也金は骨なり》是を採る後には二たひ
生するの理なし是を以て上古より漢の世に至
るまて採得し後中國の金銀ふたゝひ生する理
なしといへり又漢の代さはかり多かりし金銀
の後の代に及てうせ果し事は五胡五代遼金元
の代代の亂に夷狄の地にとり行また海外諸國
の商賣の爲にうせたり《割書:我國の昔より寛永の頃|まて六十餘州の中にて》
《割書:用ひし銅錢は皆皆異朝の錢なり日本一州に取|來りしはかりもおひたたしき事なりまして萬》
《割書:國に取ゆきし事|おしはかるへし》次には佛事興れるによれりと
申傳へたり《割書:是は異朝にてもよのつねの事に金|銀の簿なと多く用ゆる事もなく又》
《割書:殿閣等を飾るとても金銀をちりはむる事希也|佛像を造り佛殿佛閣等をつくるにはおひたた》