翻刻
つね〳〵手まわりに置(をき)番菜の種(たね)
本と心得(こゝろへ)たまふべし
一此書大てい四/季(き)の序(ついで)をもつてわか
つといへどもばんざいはかならずしも
抱(かゝは)るべからずされど殊(こと)に時候(じこう)なら
ざるものは献立(こんだて)の部(ぶ)にわけて記(しる)せり
折(おり)ふし到来(とうらい)の品(しな)ありたる時(とき)は
番菜の例(れい)にみはからひ遣(つか)ふべし
乾物(かんぶつ)塩物(しほもの)のるい多(おほ)くもらひたくはへ
おくときは巧者(こうしや)の人に尋(たつね)合(あわ)せ風味(ふうみ)
そんせぬやうにかこひ置(をき)其(その)ほど〳〵
入用の時とゝのふべし
一さしかゝり来客(らいきやく)ある時は随分(すいぶん)番菜
を取(とり)つくろひもてなすことよろし
近頃(ちかころ)世間(せけん)茶事(ちやじ)流行(リウこう)なれば茶方料
理などゝ唱(とな)へあやしうことかはりたる
やうに思へるは大に心得たがひなり
茶道(ちやどふ)はわけて真実(しんじつ)をむねとすれば
番(ばん)ざいのままもてなす事/一入(ひとしほ)風情(ふぜい)
ありて面白(おもしろ)しされど客(きやく)により
時により其/見(み)はからひ尚(なを)あるべし
たとへば干(ほし)かぶらの汁(しる)にうるはしき