翻刻
【右枠内】
【上部横書き】
浪速
【下部】
清容堂揀
選薬舗記
【上段枠内】
蘭製
醒心飲(せいしんいん)
治方
第一 気(き)つけ 目(め)まい
立(たち)ぐらみ 上症(のぼせ) りういん
頭痛(づつう) ふさぎ 癲癇(てんかん)
卒中風(そつちうぶ) 霍乱(くわくらん)によし
小児(せうに)驚風(きやうふう)によし
歯痛(はのいたみ)には水(みづ)にてときふくみて
よし
目(め)のかすむには水(みづ)に点(てん)じてまぶちに
ぬりてよし
田葉粉(たばこ)舟(ふね)かごにゑひたるによし
毒虫(どくむし)のさしたるにすりつけてよし
よく酒毒(しゆどく)を解(げ)するゆゑに二日酔(ふつかゑひ)
よし
此(この)御薬(おんくすり)は。もと西洋(せいやう)蘭人(らんじん)の傳方(でんほう)
にして。功能(こうのう)ことに多(おほ)し。最(もつとも)諸薬(しよやく)
さし合(あひ)なし
つねに用(もち)ゆるには。耳(みゝ)かきに一(いつ)はいほど。
病(やまひ)に応(わう)じて。急症(きうしやう)なとの時(とき)には。三五 厘(りん)
も飲(のむ)べし
【下段枠内】
粒甲丹(りうかうたん)一銘 睡眠薬(ねふりくすり)《割書:壱錠金壱歩|半錠金弐朱》
夫(それ)粒甲丹(りうかうたん)は文禄(ぶんろく)年中(ねんぢう)朝鮮(てうせん)攻代(こうはつ)【伐】の時(とき)肥前(ひせん)の国(くに)人氏(ぢうにん)細野(ほその)
右進(うしん)朝鮮(てうせん)に趣(おもむ)く然(しかる)に忠州(ちうしう)の城(しろ)敗軍(はいぐん)に及(および)し時(とき)国妃華(こくひくわ)
陽君(やうくん)を扶助(ふじよ)して送(おくり)ぬ其(その)喜(よろこび)に堪(たへ)ず官女(くわんぢよ)に命(めい)して嚢(のう)
中(ちう)より此粒甲丹《割書:并》方書(ほうがき)の一巻を授(さづけ)給ふ右進 帰朝(きてう)
の後(のち)彼薬(かのくすり)を試(こゝろみる)に其(その)功(かう)如神(しんのことし)後(のち)浪華(なに[わ])に移(うつ)り医(い)を業(ぎやう)
とす其(その)子(こ)道伯(どうはく)も亦(また)父(ちゝ)の業(ぎやう)を継(つぎ)吾(わが)洞津(どうしん)に来住(らいぢう)す余(よ)
其(その)隣家(りんか)に住(ぢう)し数(しば〳〵)此 薬(くすり)を求(もとめ)奇功(きかう)を得(う)る事(こと)久(ひさ)し一日(あるとき)
道伯(どうはく)曰(いはく)汝(なんじ)多年(たねん)此薬を信(しんず)る事 甚(はなはた)篤(あつ)し因(よつ)て今 汝(なんじ)に
傳(つたへ)ん広(ひろく)世(よ)を済(すくへ)とて彼方書(かのほうかき)を授(さづく)拝授(はいじゆ)して此薬を調(てう)
劑(ざいし)諸症(しよしやう)に与(あた)ふに其(その)効験(かうけん)速(すみやか)也 依(よつ)て広(ひろく)海内(かいたい)に弘(ひろめ)病(びやう)者
の一助(いちぢよ)となすべしと勧(すゝめ)に応(わう)じ今般(こんはん)売與(ばいよ)せしむる
ものなり
一此薬 百病(ひやくびやう)危急(ききう)を救(すく)ひ一切 気付(きつけ)によし諸病(しよびやう)に用ひて
大内を補(おぎな)ひ精神(せいしん)を安んじ熟睡(じゆくすい)せしむるに依(よつ)て世(よ)に
ねふり薬といふ諸薬 食物(しよくもつ)さし合なし
一 傷寒(しやうかん)疫痢(ゑきり)疱瘡(ほうそう)瘧疾(おこり)其外諸病さしこみ強く
或は嘔吐(ゑづき)止(やま)ず食(しよく)薬(くすり)一向うけざるに用てよく通す少し
にても咽喉(のんど)通(とを)れは忽(たちまち)病勢(やまい)をゆるめ熟睡(じゆくすい)しさめて
後(のち)精神(こゝろ)正しく食をすゝめ気力(きりよく)を益(ま)す
一 食傷(しよくしやう)いたみ強(つよ)く手足(てあし)冷(ひへ)脈(みやく)たへ針(はり)灸(きう)応(わう)ぜざるに
用て即功(そくこう)あり
一 魚(うを)菌(くさびら)等其外 諸毒(しよどく)にあたり死(し)にいたるものに用てたちまち
蘇(よみかへる)すべて大毒(だいどく)を解(け)する事 至(いたつ)て妙(めう)なり
一 難(なん)さんにのぞんて用ゆればたちまち安産(あんさん)する事 甚(はなはだ)妙(めう)也
一さん後(ご)血暈(めまひ)に用て即功(そくこう)あり胞衣(ゑな)くだらざるによし
男女(なんによ)とも金瘡(きんさう)腫物(しゆもつ)其外 諸病(しよびやう)より痓症(ししやう)となる
苦痛(くつう)つよく反張(そりかへり)死(し)せんとするに用てそくかうあり
一 小児(せうに)五 痛(かん)にて顔色(かほいろ)あしくやせおとろへ色々(いろいろ)の症(やまひ)と
なるによし
一 急慢(きうまん)驚風(きやうふう)にて搤搦(ひきつけ)死(し)に至(いた)る者(もの)に用て妙也
一 肝積(かんしやく)にて筋(すじ)はり痛(いたみ)正気(しやうき)を失(うしな)ひ針(はり)薬(くすり)応(わう)せざるによし
一 疱瘡(ほうさう)山あげざるによし又 痘毒(ほうそうのどく)を解(げ)す
【最終行は次コマに翻刻】