翻刻
【枠内】
しらがの薬功能 壱貝代 四十八文
世にしらがそめぐすりととなへて売(うり)ひろむるもの多(おゝ)し
その功能(かうのふ)書(かき)にいはくひとたびつけてのちふたゝびしらがになる
ことなしと夫(そ)はしるしなきそらごとにぞありけるわか
ひろむるところのしらが薬(くすり)はこれらのものにあらずひと
たびつけ用(もち)ひぬればたちまちしらがをしてくろかみと
するのみか日(ひ)を経(へ)てのちまたもとのしらがになさんとて
お六のこまかなるくしにてすきとりたまふとても中(なか)々
しらがになるといふことなしこの薬 秘(ひ)してひろめずとい
へともこう人 門前(もんぜん)に市(いち)をなすにいたればいまは世にひろめ
よと人々のすゝむるにぞこたひあたいをきはめて売(うり)
ひろむることになりぬつけ用(もち)ひやうはすぢたてにて
髪(かみ)をすこしあげゐてはだのよごれぬやうにはけにてつけ
たまへかし多(おゝ)くつけたまへばみぐるし又(また)髪(かみ)あつき御方(おんかた)は
多(おゝ)くつけてよくすきたまひたるもよし十日めあるひは
廿日めに一度(いちど)つゝかくのごとくして月日(つきひ)へぬれはのち
はしらがこと〳〵くへんじあるひはぬけ□てくろかみになる
ことふしぎともいふへし此(この)薬 月(つき)にまし年(とし)にさかゑて世に
ひろまらば日(ひ)の本(もと)ひろしといへどのちは海内(かいたい)地(ち)をはらふてし
らがつむりといふことなくなりなんことしるへし
まことに人をしてわかやかしむるの仙方南判
本家 《割書:京富小路|松原上町》 井筒屋八兵衛製
取次所 大坂天満鳥井西角 和泉屋久兵衛
つけてはげぬしらがの薬
【次枠】
家伝順気散
一 産前(さんぜん)産後(さんご)血(ち)の道(みち)によし産(さん)の時(とき)善悪(ぜんあく)をとはずニ三 度(ど)用(もち)
ひて母子(ぼし)ともに安体(あんたい)也(なり)産屋(さんや)の中(うち)居(ゐ)なをり帯(おび)をしかへ
るにその前(まへ)に此薬(このくすり)を用て血(ち)の道(みち)発(おこ)らざる也
一 難産(なんざん)色々(いろ〳〵)悪症(あくしやう)有之(これあり)二三日 産(さん)する事あたはず難儀(なんぎ)に
及ぶとも此薬(このくすり)用(もちひ)て奇妙(きみやう)平産(へいさん)也
一 気鬱(きのつき) 上気(じやうき) 目眩(めまひ) 眩暈(たちくらみ) 頭痛(づつう) 土用(どよう)八専(はつせん)にあたり煩(わづらひ)
老若(らうにやく)男女(なんによ)ともに用てよし
一手負(ておい)血留(ちどめ)に妙(みやう)也 血(ち)を納(おさ)め気(き)正(ただ)しく成(なる)居(ゐ)なをり帯(おび)を
しかへるにその前方用て血(ち)はしらず
一 物(もの)にうたれ高(たか)き所(ところ)より落(おち)又(また)落馬(らくば)などにて身(み)を打(うち)て
難儀(なんぎ)に及(およ)ぶ時(とき)早速(さつそく)此薬(このくすり)用ゆべし以来(いらい)痛(いたみ)発(おこ)らざる也
右之 薬(くすり)何(いづれ)も薄茶(うすちや)一貼(いつふく)ほどづゝ熱湯(にへゆ)にかきたてゝ用ゆべし
不熱湯(ぬるゆ)は験気(げんき)なし故(このゆへ)に此薬(このくすり)を號(なづけ)てあつゆ薬と云(いふ)
第(たい)一 血(ち)を補(おぎな)ひめぐらし気をくだす事を功能(こうのう)とす婦人(をんな)の
わづらひ色々(いろ〳〵)ありといへ共 気血(きけつ)よりは発(おこ)る事 多(おほ)し是(これ)に
よりて女人(をんな)諸病(しよびやう)に用てよし委細(くはしく)記(しるす)にいとまあらず
神妙(しんめう)有功(うかう)の薬(くすり)也(なり)懐胎(くわいたい)の女人(をんな)ある家(いへ)には此薬 貯(たくは)へ
常(つね)に用べし 江戸本町一丁目常盤橋前
人参類品々小売仕候 日野屋孫八
外に痳病せうかちの妙薬御坐候