翻刻
名もしるく春風の池よりはるとひ
やるはなの下道を分つゝゆかは秋くらか
渕錦島なとの影うつるけしき御こそと思ひ
やられ岩たちたる雲のほそうたな飛き
ぬるしのしめの浦をき花のかけはしは
ふまゝくおしくやあらむいはぬ色なか山明
の関はなのらてすくるともとかむる
たともあらし夏にうつきの関ときけは
くれ行すもとゝめまほしう御きかゝる藤浪
のゆかりの屋はいとゝ行過かたくやとはかり
ゆけは水の下に心唐くつくりなし渇にしまぬ
花も葉もえむなるに拆しもゆふ風の
さと音つれて露所せく 順みたれたるこそ
雲井よりくたせるたまもの池ならめたま
もの山も同し所にありとそこたかき松の
千世の細道平たとる〳〵夏と秋とゆきかふ
みそき坂に出ぬれはうき世の葬ひちもはら
然はてつゝ初秋の森のかくれより秋風
のいけのおもてにかよひくるけはひのたゝなら
ぬにはねをならふかかさゝきのはしならて
しら鷺のむれゐかありさま霜をわたせる
かとあやまたれま荻か関千種の園にあそはし
大かたの野へをも与所にそみるらんかつらの棹
さして月の船山柳のうらのほとりこきめく
り詫はなかつゝみのもとにやすらへは浪たゝこゝ
もとによせかへり秋のみなと田に色こきいね
ともうち重ねたるを見ても粒々みな辛苦
とかいひけむ民のしつさのはとなほし