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【右丁】
しかりとて病家(びやうか)の人 薬治(やくぢ)を
あなどるべからず病邪(ひやうじや)は薬
にあらされは除きがたし只
近世(きんせい)の人(ひと)薬治に泥滞して
他(た)の治法(ぢほう)を軽(かろ)んじ其術(そのしゆつ)疎(おろそか)
にして良法(りやうほう)を得(ゑ)ざるをかな
しむのみ○ひそかに此 誤(あやまり)の源(みなも[と])
をおもふに病家(びやうか)の人只医は
病床(びやうしやう)につきたる時 薬剤(やくざい)を乞(こふ)
ものとのみ思ひ病あるに臨(のぞ)み
ても速(そく)効をねがひ頻(しきり)に
【左丁】
薬治 針治(しんぢ)を求(もとむ)るのみにして
常(つね)に養生(ようじやう)の術(しゆつ)をも乞求(こひもと)め
ず又病あるにも灸治(きうぢ)食治(しよくぢ)
をも求めずしかるより医家(いか)
にも養生の術或は灸火(きうくは)を以
病(やまひ)を治するには強(しゐ)て心を用(もち)
ひす灸点(きうてん)するは諺(ことはざ)にいへる
付(つけ)たり役(やく)のごとく思ひ又病家
にも薬剤(やくざい)を得(ゑ)しごとくには
その恩(おも)【ママ 「おん」の誤ヵ】を思はすその報礼(ほうれい)も
なさゞる 風俗(ふうそく)となりぬしか