翻刻
【右丁】
その忌(き)にあたらざるをしらば
他(た)の業(ぎやう)をなしてもありなん
又 病家(びやうか)にも薬剤(やくざい)を幾等(いくら)薬
と雑物(ざうぶつ)の値(あたい)のやうに心得ず
又 一点(いつてん)の灸穴(きうけつ)にも病治しなば
その恩(おん)いくばくぞやたとへ医(い)の
労(ろう)は少くともその恩の重(おも)き
を思ひて分(ぶん)にしたかひ厚(あつ)く
報(ほう)ずへし仮初(かりそめ)の小事(しやうじ)だに
人の恩は報ぜざるべからず人
の病(やめ)るは死生(しせい)のかゝる所なる
【左丁】
にその恩(おん)を軽(かろ)んずるは甚 怠(おこた)
れり常(つね)に功(こう)ある医(い)にちなみ
養生(ようじやう)の道(みち)をも問(と)ひ病を
防(ふせ)ぎ天年を保(たも)つ道を習(なら)ふ
べし折にふれては音物(いんぶつ)をも
おくるべし身 貧(ひん)にしてその
物は軽(かろ)くとも情意(じやうゐ)を厚(あつ)く
してその恩(おん)を報(ほう)ずへしか
やうの事に吝(やぶさか)なる心あるべ
からず常(つね)に医(い)にちなみ稟(ひん)
受(じゆ)の強弱(きやうじやく)等を知(し)らしむれ