翻刻
【右丁】
ば病(やまひ)あるとき益(ゑき)おほし人
無益(むやく)の事に心を用ひ宝(たから)を
も費(つゐ)やせどもかゝる事には
怠(おこた)れるはあやまれり
▲薬剤(やくざい)は大かた有毒(ゆうどく)の物にし
て病をせむるの具なり実(じつ)
したる人にはつよく攻撃(かうげき)す
るともその病に的中(てきちう)せば
効(こう)ありて害(かい)なかるべししか
れども早(はや)く薬をやめて調(てう)
和(くは)すべし古人(こじん)の病は十 分(ぶん)
【左丁】
に追 去(さる)べからずといへるも薬
品(ひん)は偏(へん)気の物なればなり
況(いはん)や虚人(きよじん)には的中(てきちう)すると
も攻撃(かうげき)の剤(ざい)を久(ひさ)しく用
ゆるときはやかて害(かい)あらん病
七八分に去(さり)なばよく保養(ほよう)し
て残病(ざんひやう)は自然(しぜん)とさるをまつ
べし医(い)たる人もその術(じゆつ)に
達(たつ)せざるは攻撃(かうげき)すべく補(おきな)
ふべきを思へともその時
を失(うしな)ひ或は虚実(きよじつ)を見る