翻刻
【右丁】
中古(ちうこ)以来世に盛(さかん)なる病あり
しかるにこれらの病は古人の
論(ろん)詳(つまびらか)ならざる故に治を誤(あやま)る
ものおほし古人の論方ある
をだに真切(しんせつ)に求めざれは
新 意(い)を発明(はつめい)する事のな
きもむべなり近世の意医
の風(ふう)を見るに略(ほゞ)軒岐(けんき)の書
の文字を知れは実(じつ)に得たり
と思ひその辞(ことば)を誦(しやう)して俗
耳を驚(おどろ)[か]しわか術(じゆつ)をかざる
【左丁】
の備(そなへ)とすその病論(ひやうろん)を考(かんが)ふれ
は座上に安居(あんきよ)して急変(きうへん)の
事をはかるがごとく是(ぜ)に似(に)て
非なるのみなりこれ聖賢(せいけん)
立言の微意(ひい)を実(じつ)に熟得(じゆくとく)
せず事情(じじやう)に変通せざれば
なり又古今の方書 汗牛(かんぎう)
充棟(しうとう)かぞふるにいとまあらず
然るを一二の方書を見るも
回春(くはいしゆん)入門等によりて病 症(しやう)
方意ともに明ならす闇然(あんぜん)