翻刻
【右丁】
実(じつ)薬方の温冷(うんれい)をも考(かんがへ)
すしては危(あやふ)しよく択(ゑらぶ)へし
◯案ずるに一二味の単方(たんほう)の
みにあらず古書(こしよ)に見へずし
て民間(みんかん)に伝る薬方を以て間々(まゝ)
治効(ぢこう)を得(ゑ)て難病(なんびやう)をも治(ぢ)
するものあり本朝(ほんてう)上古(じやうこ)の
医師(いし)の立(たて)られたる薬方(やくほう)も
おほくして書に伝(つた)はらず民(みん)
間(かん)に散在(さんざい)せるもありとかや
一向(いつかう)にあなどり捨(すつ)べからず病(びやう)
【左丁】
家(か)にその薬品(やくひん)の能毒(のうどく)病者
の虚実(きよじつ)をも考(かんが)へず妄(みだり)に
用ゆるは尤あやふし謹(つゝし)むべ
ししかれども医(い)たる人 古(こ)
書(しよ)に伝(つたは)らざるを雑方(ざつほう)とし
世(よ)にまれに疾(やめ)る古書にも
くはしく論(ろん)ぜざるを雑(ざつ)病とし
て軽(かろ)んずるは誤(あやま)れり況(いはんや)古に
まれにして今 盛(さかん)に疾(やめ)る病を
やたとへ万金の貴薬(きやく)たりと
もその病に効(こう)なくは何(なん)の