翻刻
【右丁】
《割書:たまわるにて候おことらにまいらせん事かなふへからずといふさん候それ|ゆへにこそかくは望ぬれといひけれとつれなくきゝもいれす勝成侍ほど|の者に飲食のものにてはちは見せぬ物に候といふ童坊から〳〵と|わらつておことも侍の数とおもふこさめれあらおかしやといひける|に勝成大にいかつて大のまなこにかとをたてはたとにらんてにつくい|いまのことばかなをもひしらせてくれんす物をといふやき〳〵いひたち|出てかの童坊か茶の事おはりて帰るところをたゝ一太刀にきつて|捨てこゝをもさりて都のかたにのぼりしといふなり》
それより大坂に趣しに大坂の奉行人徳川殿の伏見の御館
攻へしとて洛中洛外以の外に騒動に及し時に参りあひ
幸なる事ごさんなれと夜に入て御館に参る徳川殿悦ひ
給ふ事なゝめならずしかりと申せども御前にはめさすこれは
和泉守殿いかなる事侍るとも勝成と音信を通し給はゝ
永き恨みに候べしと制し給ひし故也ける徳川殿山岡備前
【左丁】
入道を御使にて《割書:道阿弥と申|せしか事也》和泉守殿へ色々に仰らるゝ旨
ありしかば父の心も とけて 対面をゆるさる さてこそ
徳川殿にもめされけれ《割書:百人扶持|給ひしと也》程なく徳川殿奥の会津
にむかわせ給ふに 勝成 供奉して 下るそのあとにして
和泉守殿の事 ありしかば 勝成を小山の御陣にめし
いそきはせ上つて刈屋の城守へしとありしに 勝成
仰かしこまつて承りぬさりなから父のふけう蒙たりし
身の今更家子郎等ら勝成にしたかふ事あるまじ
きにて候と申すさらはとて和泉守殿の家人等にはやく
勝成の下知にしたかふへきよしの御書をなし下さる勝成