翻刻
【右丁】
これを帯しはせ上つて軍勢を催し先陣にはせ加わり
美濃国に 趣て曾根の 古城を守つて島津兵庫入道
と戦ひ大柿の城をせめて責下す此後刈屋城を領し
《割書:三万石也一万石を|加へられしと見ゆ》慶長十五年従五位下日向守に なされ
同き十九年の冬大坂に馳向ひ城をせめ明る元和元年
の夏大和路の先陣を承て 大和国の軍勢をひきゐ
てむかひ《割書:去冬の軍には 藤堂和泉守 高虎 大和国の軍勢を|ひきひしが諸将その下知に したがはさりしかは今度は》
《割書:勝成に任せ|られし也》五月六日の合戦にかたきの先陣うちやふり首
あまたきつて大御所の御陣に参らせしかは御感の仰を
かうふり明れは七日天王寺の敵をかけやぶつて父子二《割書:タ》
【左丁】
手にわかれて《割書:子息は美作守|勝俊なり》にくるかたきを追うち 勝成が
手にて明石 掃部助を 打とりまつさきに城中にせめ入
一番に簱【国字。籏は誤】をたてよき首九十七きつて献るうちすては
数をしらずしかれとも 大御所勝成かふるまひを悦ばせ
たまはず今度都にて 勝成めして 一方の大将を賜る上は
あひかまへてむかしのごとくみつからの高名せんとなおもひそと
いひしにけふの合戦に明石掃部助か 陣にむかひみづから鎗
とりてまつさきかけ敵四人とわたり合二人をは追はらひ
二人首をきるなんぞかねての仰をそむきてかくかろ〳〵敷
ふるまひをは仕る甚奇怪の 至也と 仰せられしほどに