翻刻
よく〳〵すり塩をよきほど入れてすりあげたる中へ陳
皮.橙皮.胡椒.の細末を交ぜてふた物に貯へおき三度
の食事のたび毎に湯茶をのむとき二箸づヽ用ふべし
胃(ゐ)中の酸敗液(さんはいゑき)【左ルビ:クサレミツ】をかり気血をめぐらし眼目を明にし
大小便を順利し飢渇(きかつ)をたすけ寿(ことぶき)を長くするの霊(れい)
薬(やく)也
銀鶏云此方の効能(かうのう)伝書(でんしよ)のまゝを記せり中にも寿命(じゆめう)を
長くするといへるはいとたはれたるやうなれ共方中の黒
胡麻実に寿を保つの奇薬なること我たび〳〵/見聞(けんもん)する
処なり文化年中にやありけん朔山とかいへる老翁書を
以て世に行なはれしが百八歳になれるよし其年 認(したゝ)め
し扇子我今に所持(しよじ)せり其翁のいへるに幼(よう)年のころより
父の教(をしへ)なりとて黒胡麻を一日もたやさず用ふるよし其
ゆゑにやかく寿命を保(たも)てりと噺(はな)しゝが其一類四五人も
みなこと〴〵く長寿のよしなり又 己(おのれ)先年日光へ遊歴(いうれき)せ
しとき宇津の宮にて一人の老人と道づれになりしが白
髪(はつ)雪をいたゞきながら面色(かほ)の光沢(つや)若(じやく)年の人に同じく
歩行(ほかう)の早きこと飛脚のやうにおもはれければおのれ其 壮(すこ)
健(やか)なるを賛(ほめ)つヽ跡になり先になり歩(あゆ)みしに老人のいへるに
見れは御身は弱人(わろき)なり我法を用ひ給はヾ年たけてもか