翻刻!江戸の医療と養生

コレクション: コレクション4

(長命)養生教草 - 翻刻

(長命)養生教草 - ページ 13

ページ: 13

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く丈夫になるべし我は今年九十八になれるが今にても 八九里の道はさしたる苦労(くらう)にもおぼえずまた暑寒に をかさるゝこともかつてなし妻子 眷属(けんぞく)も我に同じく大丈 夫にありしが此夏弟なるものを脚気にて先だてし也 とはなしけるが其言語相対いと約(つゞまやか)にして中々老人の 物語とはおもはれず扨其 健(すこやか)になる法はいかなる術にやと 問ひしに老人 苦笑(にがわら)ひしていへるは我このことを問はるゝ人に はなせ共聞たるのみにて用ふる人 稀(まれ)なり別のことにては なしいたつて手軽きことなれば人にも教へおん身も用ひて 試み給ふべし黒胡麻を一日に六㦮目づゝ炒(い)りて土瓶(とびん)にて 煎(せん)じ茶にかへて用ふるまでなり其煎じ糟(かす)は夜にいたら ば飯にまぶりて食すべし此外に術なしとさも手短(てみじか)に かたられしが其頃はおのれも弱(じやく)年のころなれば只きゝ たるまゝにて人にもはなさず忘れし同やうにてうち 過(すぎ)しが夫より年月を歴(へ)て黒胡麻の人身に益(えき)ある ことをしば〳〵経験(けいけん)せりさればこたび米穀 払底(ふつてい)にてい ろ〳〵なる麤(そ)【麁】食(じき)を粮(かて)とするをりなれば今此方を製し て日(ひゞ)に少しづヽ用ひなば胃中の粘液(ねんえき)をさり膓を寛(ゆる)ふ し血脈(けつみやく)を和(くわ)し飢渇(きかつ)を助くるの手当ともなるべし先 寿命の論はしばらくおいて一向(いつかう)に無造作(むぞうさ)の方なれば