翻刻!江戸の医療と養生

コレクション: コレクション4

(長命)養生教草 - 翻刻

(長命)養生教草 - ページ 16

ページ: 16

翻刻

さら驚(おとろ)きてまた仙窟(せんくつ)にかへらんとすれども遂(つひに)その 道(みち)を得(え)ずして其あたりを尋ねめぐりしが両人ともに 行かた知れずなりしとなん 銀鶏云此物語はいとたはれたることにて証(あかし)とするにはたら ねど我朝 浦島(うらしま)の古事(こじ)にも能(よく)似(に)たり又胡麻を食し て長寿するといへることは唐土(から)にてもあることを見えた りかゝるはなしも書籍(しよぢやく)に載(のせ)たれば絶(たえ)て其 理(り)なしと はいはれまじ論より証拠(しようこ)といふ諺(ことわざ)もいやといはれぬ ことにして胡麻を常に食して長寿を保ち安健(あんけん)無(ぶ) 事(じ)に世を送(おく)りし人我近く実見(しつけん)する処にして其 数(かず) 挙(あげ)てかぞへがたし一日或医に此説を解(と)きしに鼻先(はなさき)にて あひしらひきゝだにせぬ風情(ふぜい)なれば其 侭(まゝ)口を閉(とぢ)ていはず 胡麻の効のうは年来 試(こゝろみ)たるうへにてかく記せることなれば 聊(いさゝか)も浮(うき)たることにはあらず近来 西洋学(らんがく)ひらけておのれが 如き庸医(ようい)も眠(ねふり)をさまし其徳を仰(あふ)げど実地(じつち)を踏(ふま)ざる ことは我 是(これ)をとらずたとへば唐流(からりう)の医者其論は鈍(にぶ)しと いへども薬が的中(てきちゆう)して病が愈(いゆ)ればそれにてよし論は いかにもおもしろけれ共病が治(ぢ)せざれば医者(いしや)の医者 たる所以(ゆゑん)にあらず今 君父(くんふ)の仇(あだ)【注】を報(はう)ぜんとするに立派(りつぱ) に名乗(なのり)あひて勝負(せうぶ)するには及ばす譬(たとひ)寐首(ねくび)をかきて 【注 濁点の付記の誤】