翻刻
田舎(ゐなか)へたのみて山 牛房(ごぼう)の根をとりよせ庭(には)へうゑおくべ
し二月ごろより芽(め)をふきてだん〳〵に成長(せいちやう)し夏にいた
れば葉しげりておひかさなる其 時(とき)下葉からつみきり
て汁(しる)の実(み)にすべし用ふるには爪(つめ)にてひきさき塩(しほ)にて
能(よく)々 揉(もみ)水にてさらし用ふべし庖丁(はうちやう)にて切ときはえご
みいでゝ食しがたし葉をとるにもつまみきるべし跡(あと)よ
り忽(たちまち)芽(め)いづるものなり二本もうゑおくときは至つて
重宝(ちやうほう)にて汁(しる)の実(み)にことかくことなし其上水を利す
るの効あれば常に食して至てよし
空地(あきち)へ植(うへ)おくべき野菜(やさい)の事
裏屋(うらや)にて手ぜまの者は是非(ぜひ)なけれど少しにても空地(あきち)
を持(もち)たる者(もの)は野菜(やさい)をうゝべきことなり款冬(ふき).三葉(みつば).地膚(はゝき).
蘘苛(めうが).独活(うど).蓼(たで).苦菜(ちさ).生姜(せうが)。蕃椒(たうがらし)の類ひはいづかたへま
きても成長するものなれば心を用ひてうゑおくべし
又 蕃椒(とうからし)の葉をひたし物にしたるは甚 美味(びみ)なるものなり
江戸の人は余(あまり)しらねど近在(きんざい)にては折々いだすことあり
雪花菜(きらす)の貯へやう
豆腐(とうふ)のからは平日 下直(げじき)なるものにていつにてもある物
のやうにこゝろえるは大なるまちがひなり大 飢饉(きゝん)となり
ては豆腐などのくへる訳にはいかぬことゆゑ其こゝろがま