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ても其日〳〵の奢(おごり)をはぶかざれは一向に無益のことなり 公より
は莫太(ばくたい)の御慈恵(ごじけい)を蒙(かうふ)り妻子 眷属(けんぞく)を養ひながらおのれ
を初め家内の者にも美食をあたへ物見遊山などに其日を
おくるは以の外の心得ちがひなれはよく〳〵慎むべきことなりお
のれ〳〵か家業を精出し質素倹約(しつそけんやく)を専とするときは
遂に天道のあはれみを蒙り忽米価下落して豊年の春
をむかふること理において疑(うたが)ひなし申さは僅(わづか)のうちの辛抱
なればたとへ麤【麁】食をくらふも天道への御奉公なりとおも
はゞ麤(まづき)【麁】ものも/美(うまく)くへる道理なりきゝんは天災なりといへ共
天地の病ひなれば天より人を苦しませる為にとて凶年
をくだすにあらず天も地も大病は其御身の働(はたら)きもなりがたき
ことゆゑ其 隙(ひま)をうかゞひてあしき気候の邪魔(しやま)をなして耕
作にさまたげすることなれば天地の病御全快に及ぶときは直(ぢき)に
豊年(ほうねん)となりて五穀のたぐひはいふもさらなり何にても食物
自由に出来(でき)ることなれば今の内は天地の御病を御看病申上る
とこゝろえおのれ〳〵が身をつゝしみて麤【麁】食をくらひ奢(おご)りを
はぶき少も早(はや)く御全快を急(いそ)ぐやうにこゝろがくべきことなり
然るに其肝心の主人の大病を見ながら其病気を愈([い]や)さうとは
せず朝飯より食好をしていろ〳〵さま〴〵なる遊びにのみ心
を用ふるなどは人外至極(にんぐわいしごく)の振舞(ふるまひ)なりとおもふべきことなりさ