翻刻
【右丁】
道(みち)の事(こと)たらぬ事をかたり長者に伝馬(てんま)な
とをこへは。長者ゆるし侍(はんへ)りてさらは竹斎
老(らう)にしる人になり。みやこへの道(みち)しるへ頼(たの)
まんなとあれは。にらにはまきりなくよろこ
ひいとまこひし。我(わか)屋にこそはかへりけれ
第三竹斎じさんの狂哥(きやうか)の事
其ころ江戸には。事のほかくはくらん【注①】はやり
侍りて。こゝのてんやくもしそこなひ。かしこ
の大医(たいい)もけりまくりし折(をり)ふし。竹斎かの
をはりにてぐをうちし事をや。思(おもひ)ひ【語尾の重複】出(いて)
【注① 撹乱=暑気あたりによって起きる諸病の総称。】
【左丁】
けん。また火(ひ)にこりぬ心(こゝろ)にて。ひとりか二人か
なをしたりけん。大きなるかんばんにものゝ
見事に朱(しゆ)をもつて。やふにかうのものあり
くわくらんの名医(めいい)ちくさいとほり入其かたは
らに一しゆをそかきそへける
くわくらんに長刀(なぎなた)かうしゆ【注②】ふりたてゝ
てからはをゝしほねきりのいしや
とかきつけたりける
【注② 長刀香薷=解熱・利尿に用いられる薬草】