翻刻
【右丁】。
て申入へきたよりもあらねは。御出を。う
かゞひきのふよりこれに。つめかけ侍る也
とあれば。長者きこしめし。なににらみとの
かや。われらも竹斎 老(らう)の事は。内(ない)々 聞及(きゝをよ)ひ
侍(はんへ)る也かたりたき事あらは、こなたへ来(きた)り
給(たま)へやとて。ともにひろまに入しかは。にらみ
の介まづかたりていはく、こゝにひんなる女(をんな)
有。ひるはよのいとなみにひまなく。ゆふへに
をよひて紡績(はうせき)のわさつとめんとすれと■【もヵ】
てらすへきあふらなし。其となりにうとく成(なる)
【左丁】
もの有。ひるはひねもそ。【注】しゆゑんに長(ちやう)し。夜(よ)
になれは。ともしひあかくかゝけ。いたつらにを
る。此 貧女(ひんによ)福(ふく)人にかたりていはく。我(われ)其方(そのはう)の
火(ひ)のかけをかうふり。夜るのわさつとめ侍(さふらは)ん
とこふ。これ長者(ちやうしや)のともし火(ひ)に。さまたくる
事なくて。貧女(ひんによ)はいとなみをつとむ長者
も我(われ)にともし火(ひ)をかし給はれといふ。長者
聞てしかり。我にらみとのに。ともし火をか
さん。実義(しつぎ)をあかし給へといふ。其 時(とき)にらみの
すけ。我たのみたる人。今度(こんど)みやこへのほるに
【注 「みねもす」の変化した語。】