翻刻
【右丁】
にて、けんあるとき。それこそは。大医(たいい)は大い程(ほと)
あるなともてはやし侍(はんへ)る也。またはからの大(やま)
和(と)のいじゆつにもれ。万(ばん)死一 生(しやう)の病人(ひやうにん)を捨(すて)
ものにして我等(われら)に見すれは。いかんぞわれら
もくすし得(ゑ)ん。我(わか)くすりのつたなきにあらす
すくせのあしきといひけれは、長者(ちやうしや)又いはく
其方(そのはう)の才智(さいち)を以(もつ)て。たとひいしやをし給(たま)はす
とも、又よの事のかせぎもあるへきに。いかん
そかくまて貧苦(ひんく)にしつみ給そと。有(あり)ける時(とき)
竹斎も口をつぐみてゐたりしか。にらみの介
【左丁】
まかり出申けるは君はしらすやかの宋(そう)の
元君(げんくん)ゆめ見る所(ところ)の神霊(しんれい)のかめをむかし宋(そう)
の元君一 夜(よ)のゆめに髪(はつ)をかうふれる人の
阿門(あもん)をうかゞひていはく我(われ)はこれ宰路(さいろ)の
淵(ふち)より清江(せいこう)のために河伯(かはく)の所(ところ)につかひたり
漁者(きよしや)余(よ)旦といへるものわれを得(え)たりと見
たり元君(けんくん)ゆめさめてのち人をしてうらな
はしめ給(たま)へはこれ神亀(しんき)ならんといへり君(きみ)の
いはく漁者に余旦といへるもの有やと尋(たづね)
給へは左右ありとこたへ奉(たてまつ)る君かの漁者(ぎよしや)