翻刻
【右丁】
ないさせ此 内(うち)にやぶくすしの。竹斎やおはしま
すととへは。下部(しもへ)かくとはしれど。たのみたる人の
心もしりかたけれは。われは何をも存(そんせ)ぬ身(み)也
うちに其やうなる人やおはしますか。とひ
侍るへし。さてきさまは。いつくよりの御つかひ
にやととかむれは。にらみいへるやう。いやくる
しうもなき身也。とかく我たのみたる人に
あはせ給へなといへは、下部(しもべ)うちに入。此 者(もの)か男(おとこ)
つき【注】ものいひなと。つぶさにかたれは。竹斎や
かてにらみかたつね来(きた)るとしりて出てあふ
【左丁】
へきや。又心むつかしけれは。こゝにはゐ侍らぬ
なといつはらんと。かなたこなたあんしわつらふ
心をしりて。をんないへるかの内々物かたりの
むつかしやの。にらみとのにて渡(わた)り給ふや。とかく
出てあい給へそれこそ我(われ)らかゆくすゑにも竹
若(わか)かなかき世のためにもしかるへからんなと。か
きくとくも。我ためおもふにやといとほしき
ものから。我か手をきりてまたこと人に
あつらへんもつみつくらるゝ。わさにやと思
ひしれは。せましきものは此 道(みち)なるへし。我
【注 男付き=男ぶり。】