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竹斎狂歌物語 3巻 - 翻刻

竹斎狂歌物語 3巻 - ページ 27

ページ: 27

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【右丁】 なしうもうたてくも有。さやうのさもしき 事は思ひともよりさふらはす【注①】なといへは。かゝ いふやう。今(いま)こそ其方(そのはう)もわかれのかなしき侭(まゝ) にさやうにのたまふとも。一日も此 世(よ)にたゝすみ 侍るうちは。あるそてはふるもふらるれなき 袖のなみたにしつむ身のとりをきかねて もかくごし給はぬこそはかなけれなと。色(いろ)々 に申けれとも本(もと)より竹斎を湯(ゆ)のそこ水(みつ)の そこまてもと思ひこみたる。女なれはいかて 心のうつるべき。一じゆのかけ【注②】にやどるも。一世なら 【左丁】 ぬえにしと聞(きけ)はまして。年(とし)月そひまいらせし事 なれはためあしかれとや思ふへき、其 後(のち)はさし うづふき、【注③】念仏(ねんぶつ)のみ申し。しか〳〵のこたへもせさ りしかはかゝ心に思ふやう。とかく此人とかたら ひあはせたる分(ぶん)にては。いつがいつまてもぜに になる事あるまし。しよせんそれかしばかり 竹斎 老(らう)の宿所(しゆくしよ)へ参(まい)り。此人のいへるなとかこ つけ”事して。一分にてもねだれとらはやと思(おもふ) 心をしるへとして。はる〳〵の道(みち)をこへ。竹斎の 宿所につきものまうさんと申しける、竹斎 折(をり) 【注① 「思ひとも寄らず」の丁寧な言い方。思いもよらず。】 【注② 「一樹の陰」=仏教のたとえで、見知らぬ旅人同士がたまたま同じ木の陰に宿るというような、現世におけるかりそめの間柄。】 【注③ さしうつぶし=「さし」は接頭語。うつぶしはうつむくに同じ。濁点の位置がずれている。】