翻刻
【右丁】
覚(おほえ)けん。にらみ立(たち)よりいふやうは。此 明神(みやうじん)[と]
申すは別而(へつして)霊験(れいけん)あらたにて。むかし伊豆守(いつのかみ)
実綱(さねつな)ひでりをうれへ給しを。能因法師(のういんほうし)と
いへるなん一しゆよみ聞(きこ)えし。和哥(わか)の徳(とく)によ
りにはかに雨(あめ)ふり下(くだ)りつ■。草木(さうもく)色(いろ)をなを
し。また能筆(のうひつ)の佐理(さり)といへるなん。にしのうみ
より伊予(いよ)のくにゝいたり侍し折(おり)ふし。なみ風(かぜ)
あらく吹(ふき)。たてゝふね出すべきたよりもなかり
しに。其夜(そのよ)此明神ゆめの御ちかひに。神前(しんぜん)の額(かく)
をみづからかき佐理(さり)にかくべきよし。御 告(つげ)まし
【左丁】
ませは。佐理 奇異(きい)のおもひをなし給ひ。その
まゝかきてかけ給へは。やがてなみかぜしづまり
はやともづなときものし。風のまに〳〵こぎ
出てけるとかやその額(がく) ̄ニ曰(いはく)
日本総鎮守三島大明神
かゝるためしもくらからぬ。宮(みや)井なれとも。能(のう)
因(いん)法師は古今(ここん)独歩(とつほ)のうたの作者(さくしや)。佐理(さりは) ̄ハ本朝(ほんてう)
無双(ぶさう)の能書(のうしよ)なれば。我等が今 手向(たむく)る言(こと)の
葉(は)□□□□のまねのからすなるべけれども
其心ざしは同じきとて。御代(みよ)太平(たいへい)のすみをす