翻刻
竹斎上 二
こそかへす〳〵も神妙(しんべう)の至(いた)りなれ。われ〳〵たれば
なんぢもなんぢたりいそきみやこへのぼるへし
旅(たひ)の用意(ようい)をせよとある、にらみ聞(きゝ)て心に思(おも)
へらく。かやうのときならでは。人にいけんもなら
ぬものなれは、此たひきみを心よくいさめはや
と思ひいひ侍しは。其事にて候。都(みやこ)へ御のぼり
あらんよし仰(おほせ)らるれども。名にしおふおはし
まさされは何(なに)をかきんちやくのあるじとしまい
らせん。此ふんにてはのほるべきたよりなく候
【左丁】
かくなりはつるといへる。我君(わかきみ)のかくご。あしく
ものことに。へつらはぬかほにて。人ましりも
うすきゆへなり、今まての御 思案(しあん)をはらり
と引(ひき)かへ。たのしき人によりそひ、猶も御ひげ
のちりの世にとり〳〵の。才覚(さいかく)をめくらし
給(たまひ)ひ。【語尾の重複】たとひあたなる、しのひありきなりとも
しる人にあひたるときは、只(たゝ)今(いま)はそんしやう【存生】
そこへ朝(あさ)みやくにまかる。又は急病人(きうびやうにん)あれは
とりあへすなと仰(おほせ)らるゝ物ならは。しりたる
人は、今こそ竹斎 老(らう)のりやうぢ、専(もつはら)にて。つゆ