翻刻
【右丁】
のひ□なく見ゆれ、いしやはたゞ上 手(す)もへた
もなしとかくはやりぐすしの。手にかゝらんと
しるもしらぬも、みやくをう[か]ゞひ、灸(きう)ををろし
て給(たま)はれと、門前(もんぜん)に市(いち)をなし、たてる車(くるま)も多(をゝ)か
らんに。いかてしぶとき。貧乏(びんぼ)神なりとも。やはか
しりをもとゞめ得んと。こと葉をたくみに、申け
れば。竹斎うちうなつき。なんぢかいへる状しる也
さりなからつたへきく。名僧(めいそう)貴(き)僧の無しつのつみ
にしつみ、あたらみ【注①】をはかなくせさせ給ふも多(をゝ)
し、いかんぞ其なんをひらくに。うとからんや。こ
【左丁】
れみな、前世(ぜんぜ)のくわほうによる事也。我(われ)もむも
れ木の人しれず。立身(りつしん)のわさ、おもはぬにしも
あらねと。とかく貧乏(ひんほ)神、此やせ法師(ほうし)を氏子(うぢこ)
にせまほしくやおほしめしけん。玉(たま)ゆら【注②】もはな
れ給はされは。我もめいわく千万(せんばん)也我此つ
らき神(かみ)を題(たい)にして。一しゆよみ侍らん聞(きゝ)て少
心をもなくさめよとてとりあへす
遠(とを)のけはいぢにかゝれるちかつくと
ねんころふりのつらきこの神
にらみも此おかしさに談合(だんかう)のしなも忘れて
【注① 「あたらみ(惜身)=死なせたり落ちぶれさせたりするには惜しい、すぐれた身。】
【注② ちょっとの間】