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つくしい男が空色(そらいろ)のうす物 着(き)て。にこ〳〵笑ふ様な気(け)
色(しき)東山も一目にて。惟茂様の吉田のおやかた。手に取
様に見ゆるれ共毎日 遠(とを)目に見る計。いつよびむかへ
て下さるやらもしお心が替(かは)つても。世間忍びのけいやく
なれば恨みいふてもはがきかぬ。ひとりしんきをやむ計。
四方の霞(かすみ)ははれたれどみづからが気ははれぬ。皆は心に苦(く)
がなふて浦山しいなとの給へば。さえだの局(つぼね)聞もあへす。
それは案(あん)じ過しと申物。仲人(なかうと)なしの御 契約(けいやく)世間へしれ
ぬと申せはとて。人にこそよれ惟茂様お詞といひ数通(すつう)の
お文。うそが有て能(よい)物かお大名成 高家(かうけ)也。此度だいり
のお手がら余五将軍(よごしやうぐん)に成給へは。関白様かどなたぞれ
き〳〵のお仲人で。表向(おもてむき)の云入の有は定(ぢやう)追付あれ
に。御祝言の御殿が立て御夫婦お顔をならへて。東山
の春秋をお庭に御らんなさるゝは今の事【注】。少いそ
【注 目の前迫ったこと。】