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そこへ絹(きぬ)上下のなで付男。年比はい【注①】も卅一 字(じ)進上物も
哥のだいにつがいすへて持せたる山鳥の尾のしだりをの。長袖
なりと見す〳〵も公家衆よりの。お使者ならん。平樽かた
げてくる中間。是は武家(ぶけ)か公家(くげ)方か。されば樽が五升
樽(たる)御所方といふ心。公家衆で有ふか中間がやりおとがひ。【注②】
武家方でもあらふかと目利(めきゝ)する間にまたそこへ蟇(ひきがへる)に
似た魚五つ台(だい)に乗せたはありやなんぞ。あれは𫙠(ふぐ)と申
物五つならべた進上はお出入の呉服(ごふく)屋と。さいてからは
一寸もちがひはせまひと笑はるゝ。爰に一きはめにたつて
州浜形(すはまがた)の大 島台(しまだい)。松竹に鶴(つる)と亀(かめ)蒔絵(まきゑ)の文ばこ
紅(くれない)の。紐(ひぼ)なが〳〵とむすびあげ。仕丁(しちやう)二人が持舟にさな
がら〽祭(まつり)の荷ひ物。往来(ゆきゝ)も見返る折から橘(たちはな)の諸任(もろとうは)郁(いう)
芳門(はうもん)【注③】の番替り油の小路の四辻。馬をはたと乗かけ
たり。かちの者ひぢをはり。大道一はい是なんだ。はやく
【注① 年ごろばい=年かっこう。およその年齢。】
【注② 槍頤(やりおとがひ)=長くとがったあご。】
【注③ 平安京大内裏外郭門の一つ。】