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取てなげ。諸任が乗たる馬のむながいつかんでゑい〳〵〳〵
と二三間尻ゐにどうどねぢ付《割書:ヤイ|》見事馬にのつ
たれば定て武士のきつはしならん。眼(まなこ)が見えぬか法式を
存せぬか。錦(にしき)の小路の中納言殿の御屋形。かくいふは御家
の雑掌(ざつしやう)金剛(こんごう)兵衛 利綱(としつな)。すいさん至極(しごく)な御門に馬を乗
かけ下人原にふみ立させ。ぬつくりと懐(ふところ)手で見ていよふと
思ふか。《割書:サア|》下馬せうかせまいか。但引ずりおろさふかと手ぐすね
引てせめつくる。《割書:ヤア|》公家侍め。太宰(だざい)の大弐橘の諸任を
見しらぬか。禁中(きんちう)の宝釼(ほうけん)平国(くにむけ)の御太刀を拝領(はいりやう)
せんと。度々 奏問(そうもん)せし我願叶はず剰。心をかけし世継御
前迄惟茂に下され遺恨(ゐこん)ふかき惟茂が進物に。道をふさ
がれ悪口(あつこう)させ。此門内へかき入しを堪忍(かんにん)する諸任ならず。
是へ出してふみくたかせい。否(いな)といはゞ公家でも御所で
も乗こんで。やたい共に馬足にかけみぢんにするが《割書:サア|》