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違乱(ゐらん)有て姫君の御身の上いかゞ也某は二三町先へ参り事のやうを
はからはん。お乗物に気を付られよといひ捨て只一人。先に立てぞい
そぎける。はや法性寺(ほつしやうし)の四つの鐘はや瀬にひゞく賀茂川の。堤(つゝみ)の
影よりほうかぶりの男二人出ると見へしが挑灯持をはたと蹴(け)たおし。
挑灯みぢんにふみくだけばとこやみとこそ成たりけれ。供人是はと
さはぐ所に。爰かしこより数十人が足音して星(ほし)にうつろふぬき身の光
太刀を渡せ〳〵といふ声計。姿(すがた)は見えずめくら打に切まくれは《振り仮名:轆■|ろくしやく》【車+勺】
中間青侍すねをながれ腕(うで)を落されなむさんみけんしてや
られ胴骨(どうほね)腰骨(こしほね)こびん先。あいた〳〵痛(いた)手おはぬ者もなく
泣つわめいつ逃て行。姫君は乗物に生たる心地もなき悲しみの。
声をしるべに馳(はせ)あつまり太刀こそはとらず共。世継御前は是なるはと。
乗物手々に追取まき行方しらず落うせけり。金剛兵衛は五
六町行過見れは挑灯消て。人声遥に騒動(さうどう)すあら心えすきづかはし
と。息(いき)をかぎり足 限(かき)り走(はし)つて帰る夜 ̄ルの道。何かはしらずふみすべり