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翻刻
かばかされしかと歯(は)がみをなして。どうと座し。《割書:エヽ|》口 惜(おし)い〳〵と
石を取てかみくだき〳〵。無念涙にかきくれし。心の内こそ道理
なれ。かくては主君の云わけなしまだ〳〵つらをさらさんより。じがいせんと
ひざ立なをし向(むか)ふを急と見渡せば。《割書:ヤアヽ|》さがり松の松影に挑灯(ちやうちん)
ちらめき。人足あまた乗物もほの見ゆる。《割書:サア|》あれに極つた。一寸もや
らふかとめさすもしらずくらき夜に。道も畠(はたけ)もわかちなくもみ
にもふてぞ〽追かくり。世継御前は大内よりすぐに嫁入の行列(ぎやうれつ)。
【左丁は落丁ヵ・翻刻文は次コマ右丁】
功(こう)の武士さへ逃足にいはんやかひなき青女房。中間小者乗物捨皆
ちり〳〵に落うせけり世継御前は声を上 ̄ケ是はそも何ごとぞ何者
のしわざぞやたすけてくれよと泣給ふ走寄て《割書:ヲヽ》お道理〳〵。某が
有からは悲しい事はない。あれ月代(つきしろ)もあかつたり惟茂卿へも程ちかし。乗
物の一 挺(ちやう)などはひつかたげても参らふが。先お心をしつめられいさそろ
〳〵おかちでと。乗物の戸を明れば《割書:ヤヽ》こは。そなたは見しらぬ何者しや
と二度びつくりに魂(たましい)きへ。利綱も横(よこ)手を打こりやちがふた。《割書:エヽ》せくまい〳〵