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【右丁】
功(こう)の武士さへ逃足にいはんやかひなき青女房。中間小者乗物捨皆
ちり〳〵に落うせけり世継御前は声を上 ̄ケ是はそも何ごとぞ何者
のしわざぞやたすけてくれよと泣給ふ走寄て《割書:ヲヽ》お道理〳〵。某が
有からは悲しい事はない。あれ月代(つきしろ)もあかつたり惟茂卿へも程ちかし。乗
物の一 挺(ちやう)などはひつかたげても参らふが。先お心をしつめられいさそろ
〳〵おかちでと。乗物の戸を明れば《割書:ヤヽ》こは。そなたは見しらぬ何者しや
と二度びつくりに魂(たましい)きへ。利綱も横(よこ)手を打こりやちがふた。《割書:エヽ》せくまい〳〵
【左丁】
と思へ共せいたそうな。口惜やと我身ながらも身にうろたへあきれて
空を見る顔(かほ)も。廿三夜のま夜中の月もきよろりと出にける。かゝる所
に匹夫(ひつふ)共七人計乗物かゝせ馳(はせ)来り。あれこそ金剛兵衛利綱。《割書:ヤイ|》うろ
たへ者。主の娘は此乗物此方に入用なし。世継御前と平国の御太刀所
望ゆへ。取ちかへてこつちも麁相(そさう)そつちも麁相。太刀の行衛は追て
の沙汰先此乗物とかへ〳〵すれは両方よし両徳渡せ〳〵と
わめきける。利綱大きにいさみ出やれ〳〵よふ来たなあ。此金剛兵衛を