← 前のページ
ページ 29 / 100
次のページ →
翻刻
せば太刀のかねのつゞかん程めつた切の一軍。つゞけや人々《割書:ヲヽ|》おもし
ろし尤と。爰にはらつと座を立は。茨菰大手をひろげ。あゝそこつ
なり旁(かた〴〵)しばし〳〵とをしとめ。橘の諸任がしわざと世上の噂。いづ
れもの了簡(れうけん)さる事ながら。世継御前の御 輿(こし)には鷹巣(たかのす)の帯刀
太郎。禁(きん)中しゆごの武士多 ̄キ中に一人にえらはれたる勇者。御太
刀を預 ̄ツ てひつそふたれば。諸任がきつてかゝればとてみだりに
おめ〳〵渡べき様なし。し□【かヵ】も彼帯刀その夜より行方なく。今に
ありかしれざるとは爰にふしんの有所。諸任が多勢にかこまれ
御太刀をうばゝれたるやひとつ。まつた此 騒動(さうどう)をかこ付に帯刀が欲(よく)
心気ざし。御太刀を盗(ぬすみ)ちくてんしたるや一つ。有無(うむ)の両義しれざる
中一戦に及ばんこと。禁裏(きんり)の聞え然べからず。涯分(がいふん)先鷹巣めを尋
出し首をふまへて白状(はくでう)せさせんに。御太刀の有所しれぬ事や
有べき。かまへてせくまい〳〵と。いさむ諸武士を押とゞめゆう〳〵と
座したるは。さすが茨菰知行高家老の思案(しあん)ぞ格別(かくへつ)成。かゝる所へ