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せば使。お恨の品々おゆかしがる【注①】も第一。お咄も申せとて腰元衆
もおほき中に。梅の井まいれ。あいと申て参りしからは。ひつきやう
姫君の心をくんでのおもはく咄(はなし)。おまへも《割書:サア|》。其三つ指(ゆび)わりひざ
取置て。お姫様と惟茂様のたいこ持じやと思召せ。かたい顔(かほ)遊ばし
ても。色ごのみの惟茂様につかはるゝお人しや者。それ髭(ひげ)のかゝりが
すけべいの。べいの字成に見へますととんと扣(たゝい)て寄そへば。さすがの
おもだか挨拶なく。軍兵の評判聞たる外。耳なれぬ恋ばなし。
まじめに成こそおかしけれ。梅の井かさねて。じたい帝(みかど)さまが
見かど様。変化(へんげ)退治(たいぢ)の御ほうびなら。大国小国馬物具でよい
事を。世継御前とはいな物。よくは宣旨(せんじ)にもせよ惟茂様御 心(しん)
底(てい)さへかはらずは。玉ゆら姫と申て契約(けいやく)の妻有と。達(たつ)て御しん
しやくなさるゝに。いかな王様も押付わざはなされぬ筈(はづ)。根が
移(うつり)気な惟茂様跡先しらずぼか〳〵と【注②】。あだぼれして畏(かしこまつ)た
とお請合。案(あん)じても御 覧(らん)なされ。男ひとりに女房ふたりそも
【注① 見たがる・知りたがる・聞きたがる等、心ひかれゆかしく思う気持ちを言動に表す。】
【注② 勢いの盛んなさま。急であるさま。】