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や杵(きね)一本に臼(うす)二つで。いかなこれもちも搗(つく)には少しんどうにこざん
しよ。此度 路次(ろし)の騒動(さうどう)も玉ゆら姫様の乗物を。世継御前と心へ
悪人共がひつかたげてはしるやら。わたしが兄の利綱もきのせく
まゝに取ちがへて。世継様の供先で楚忽(そこつ)の働。一かたならぬ大もめ。
事のおこりは皆惟茂様の不心中ゆへ。され共兄の金剛兵衛。なん
なら世継様もばい返し。おふた方共わたしがやしきに忍ばせ置参らせしが。
《割書:アヽ|》さすがは上人方案じたとは違(ちが)ふて。其むつまじさ中のよさ。琴
のつれ引ついまつの哥かるたもあふさか山のさねかづら。わるい所へ
気を廻しておふたりのこそぐり合。腰元衆の 囉(もら)ひ笑ひ。脇から
見ての見事さ。とふ共かう共いはれねど。悋気(りんき)妬(ねたみ)は女の役(やく)。そこ
ゐにどふした無 分別(ふんへつ)もと油断ならず。剃刀(かみそり)はさみもおそばに置
ぬわたしら兄弟が気くばり。生(なま)物二疋預つてかふいふ内も気
遣 絶(たへ)ず。若(もし)何れにても御身の上にあやまち有ては金剛兵衛は
せつふく。第一はお家の疵(きづ)。玉ゆらさまの仰を受て此うつふん云に来た