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私も定る男はなしうき名がたゝばそれかぎり《割書:サア|》。こざんせと
手を取て引ずれば。したゝるいなんのまね。ひげぐちそらして
どうさんせかうさんせと。ひらたくたい口上がどふ主人へいはるゝもの。
一生の厚恩(かうをん)こらや〳〵とふり切て変化に恐(おそ)れぬおもだかも。
後(うしろ)を見せて逃つ。かくれつあなたへ追かけこなたへかゞみ。走廻つ
て後成。一間にぐはたと行あたり。襖(ふすま)につれておもだか次郎
あをのけにどうとこけ。起あがれば惟茂卿 見台(けんだい)にむか
わせ給ひ御 学問(がくもん)の最中(さいちう)。二人ははつと飛のいてせきめんしたる
計也。惟茂につこと笑はせ給ひ。さいぜんよりの有増(あらまし)聞たるぞ。
物がたきおもだかゞ取次しかぬるもことはり。お身は金剛兵衛が妹(いもと)
梅の井とや。兄利綱が働(はたらき)にて世継が身の上つゝがなく。玉ゆら
諸共かくまへ置たる由過分〳〵。我も飛立玉ゆら姫ゆかしさ
かぎりあらね共。平国(くにむけ)の御太刀 紛失(ふんしつ)したる事いかゞと詮義(せんぎ)の
最中。世間のとなへを憚(はゞか)りふみをもつても音づれず。女ごゝろに