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ての我夫を。横どりせうとはあたゝか【注①】な。手柄(てがら)に成ならそふてみや
《割書:サア|》そやらぬかと声もわな〳〵身をふるはして責(せめ)かくれば玉ゆらも云
まけじとおんでもない【注②】ことそふて見しよ。綸言(りんげん)ごかしおいてたも。帝
の仰の汗よりもこつちの汗はしめあふて互の肌の汗雫。すふても
見ること成まい。此道計はけん付【注③】におせどおされぬ茨(いばら)の枝。名付計
のわかくさの【注④】下 紐(ひほ)一夜ときもせで。肌(はだ)のあぢはいしりぬいた此玉ゆら
をさし置夫婦とはどの口でむすぶの神も御せうらん。日月地に
落 駒(こま)に角はへ鼠が猫をくい殺(ころ)す。うき世に成たらしらぬこと。命
の内は姫ごせの一分立て【注⑤】立ぬいて。世間広ふそふてみしよ。《割書:アヽ|》あの口
はい云そみない顔付して。ほんにつべこへ〳〵とよいかげんてやみやらぬと。
はしやいだちよほ〳〵口つめつて〳〵つめり上て置ぞや。《割書:イヤ|》舌(した)ながし【注⑥】胸紐(むなひぼ)
からかく様にさへつめられぬ大じの身。そなたが仕付せうとはわが身つめ
つて人のいたさ。思ひしれと飛かゝり世継御前のかた先をほつかりとかみ付ば
《割書:アヽイタ|》もう堪忍(かんにん)せぬ腹立や口惜やと涙つらぬく玉くしげ。そばに有しを
【注① いい気なさま。ずうずうしくこしゃくなさま。】
【注② おんでもない=いうまでもない。】
【注③ 権付=権力にまかせて言動すること。】
【注④ みずみずしい、新鮮なものにかかる(妻、新(にひ)等)枕詞。】
【注⑤ 「一分(ぶん)立てる」=一身の面目を立てる】
【注⑥ 言葉が過ぎる。言い方が生意気である。】