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幸とかんざしかうがい油つぼ。打付るやら踏(ふみ)わるやらやくたい更になかりけり。
梅のいを始腰元 端(はした)女。驚(おどろ)きさはぎ真(まん)中へ分入て。是はまあはした
ない。つかみ付の扣(たゝく)のとは下々の悋気(りんき)ごと。上つかたの有まいこと玉ゆら様
からおしづまり。世つぎ様御かんにん腰元中間へ此けんくは。もらひましたと
せなかをさすりすかしてもたらしても。いや〳〵けもない【注】かんにんせぬ。
はなしてぞん分いはしやいのと。泣さけびのび上り飛(とび)出〳〵し給へ共。腰
もと四方に取かこみ無理(むり)むたいに両手を取引つれ〽おくにぞ入にける。
玉ゆら姫は。只一人跡に残て立つゐつ畳(たゝみ)にかつはと身をなけふし
わつとさけびおはせしが。はかなの女の身や口先て云 勝(かつ)ても。世継御
ぜんは帝から。勅諚(ちよくぢやう)のふうふこちの契りは内證(ないしやう)ごと。どふこけても世継
めが大じの男を我物顔。とかくせんをこされぬ先おやかたへかけこんで。
惟茂様にひつたりとしがみ付てゐましよ。《割書:ムヽ|》よい思案と裾(すそ)かい取かけ
出てはかけ戻り。《割書:アヽ|》是ても世継が此世にあれは怨のあた。妬(ねたま)しやつら
にくやと。すつくと立つどふとゐつはがみはたゝきがた〳〵〳〵。今のまに
【注 気もない=とんでもない。】