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世継めがしねがな〳〵天もおちよ地もさけよ。山も崩(くずれ)ておちかゝり世
つぎが五 体(たい)くだけよかし。につくし〳〵のみだれ髪。かもじほどけてちはやふる
悋気(りんき)の神はなき世 彼(かの)。庭(には)の植込(うへこみ)松杉も神木と観念(くはんねん)し。しんゐのかな
釘心のかなづち打 殺(ころ)したや殺したや。くしげ見れ共 刃物(はもの)はなし。《割書:エヽ|》何とせん。
是よ〳〵二面の鏡思ひ付たりあら嬉し。鏡は女の魂(たましい)武士のたちかたな。
本望とげん銘(めい)の物。ゑたりや嬉しと走よれは柳の髪も我涙も
共にはら〳〵はら〳〵〳〵腹立や此かゞみ。世つぎごぜんか朝夕にべに白粉(おしろい)の
ときみがき。粧(よそほ)ひ作て主の有男をね取第一のにくいやつは此鏡。みる
も恨のますかゞみと踏付。〳〵取て投(なげ)。是は又我姿見くもらぬ物を
かゞみ山。心ぞ霞(かすむ)悋気(りんき)の雲霧(くもきり)誰とぎたてん水銀(みづかね)の。水もらさじとち
かひてし地かねをあだに捨られし。此恨は生々世々つきせぬ物といか
ればいかり。笑へは笑ふ正 直(ぢき)の姿のかゞみまるく共れんぼのかどひし【注】忽に。剣【釼】
となして我念力思ひはらさで置べきかと。小脇にかい込 踊(おどり)出 築(つき)山の岩角
に。押当ては押戻し。恋と妬(ねたみ)と浮(うき)世のつらさ三つの袷砥(あわせど)しんゐのめらと。
【注 「角菱」=態度や言葉などが角ばっていること。】