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木影(こかげ)に身を忍ぶ。かく共しらず両人さゝやいてはうなづき合。奥をめがけ
て行所を玉ゆらかゞみ追取のべ。走 ̄リ かゝつて切付ればさしつたりと
ふり返り。両方より切りくる刀の光かゞみの影。でんくはう撃(げき)するごとく
からり〳〵と切結び。受つながしつしばしが程刀に向ふかゞみの刃。念力込 ̄メ
てはつしと打ば。真甲(まつこう)より立 割(わり)に二つに成てぞ卧(ふし)たりける。すきを
あらせず今一人 畳(たゝみ)かけて打太刀に。女力の手もよはりかゞみをからつと
打落され。逃入らんとし給ふを。さもしや上らうあまさじと。取てひつふせ
既(すでに)両手を捻あぐる。狼藉(らうぜき)者が入たるぞ出あへ〳〵とさけび給へは。金剛兵衛 戸障子(としやうじ)
蹴破(けやぶ) ̄リ飛で出。もとくびつかんで引上 ̄ケ どうど打付腰の骨(ほね)ゑいやうんと踏(ふみ)付。おのれ
つらを見しつた。諸任が郎等 猿胯(さるまた)与一よな。是姫君惟茂公は御太刀を尋ん
為ひそかに都を御出。此留主を伺(うかゞい)いか成 悪事(あくし)か仕出さん。御両人に用心いたせと
しつけんおもだか次郎只今しらせに参りし所。扨々こらへぜいなくはやまつた悪人
すぐに此足てふみ殺さうか。但恥をかいても生たいかぬかせ〳〵といへ共更に返(へん)
答(とう)せず。腰より鼻笛(はなふゑ)取出しふかんとするをひつたくり。《割書:ヤア|》扨は相図(あひづ)のふへか能物(よいもの)